30歳のとき、突如として襲った大腿骨骨頭壊死。
激しい痛みに悩まされ、人工関節置換術もまだ普及していない時代、私は一縷の望みを託して「回転骨切り術」という手術を受けました。
この術式は、股関節を切り回転させることで壊死部分を避け、残った健康な骨で体重を支えるというものです。
しかし、予後のリハビリは厳しく、歩行の再獲得には長い時間と忍耐が必要でした。
この体験記では、当時の医療環境の限界と、それを乗り越えようとする術後のリハビリの苦労について詳しくお話しします。
今も同じ病に悩む方々が、この記録を通して少しでも勇気を持てるよう、当時の実体験を綴りました。
突然の激痛、その正体とは?
30歳という若さで左脚に現れた強烈な痛み。
初めは軽いけがだと思い込もうとしていましたが、痛みは日増しに悪化し、生活に大きな支障をきたすまでになりました。
そして、診断で告げられた病名は「大腿骨骨頭壊死」――予想もしなかった病との出会いです。
以下の記事では、発症のキッカケから診断に至るまでの経緯や病気の詳細について、私の実体験をもとに振り返っています。
手術方法
左大腿骨頭壊死の手術は、「人工関節置換術」「左大腿骨・回転骨切り術」どちらかの可能性がありました。
ただ、私の年齢の関係で、「回転骨切り術」に決まりました。
そして、手術日は、私の誕生日の翌日の1984年12月6日でした。
なぜ人工関節置換術ができなかったのか
股関節には歩行時に体重の3倍から6倍程度の荷重がかかります。
1984年当時の人工関節では荷重に耐えれないので、10年しか持たないと言われていました。
そのため、私の場合は、人工関節置換術は選ばれませんでした。
手術は「回転骨切り術」
回転骨切り術は、大腿骨骨頭壊死の進行を抑えるための手術です。
切開後、大腿骨を切り、壊死部分に荷重がかからないように回転させ、健康な骨部分に荷重を分散させて、スクリューで固定します。
手術後のリハビリとは
手術後のリハビリは、私の場合、入院中の「初期リハビリ」「中期リハビリ」そして、退院後の「後期リハビリ」の3段階のリハビリでした。
初期リハビリ(手術直後から1か月)
手術後1か月はベッド上安静
術後は股関節に荷重をかけないことが第一だったため、1か月は排便・排尿もすべてベッド上で行いました。
あの当時は、病院の完全看護ではなく、家族の看護が推奨されていたので、毎日、病院の近所に住んでいた母親が排便の処理をしてくれました。
手術は、12月6日で、ベット上安静が解除されたのが、翌年の1月10日ですから、クリスマスも大晦日、お正月もベット上で過ごしました。
普通の年なら、クリスマスケーキを食べたり、こたつに入って、お雑煮やおせちを食べているのにと思うと切なくなりました。
また、左脚に重りをつけて引っ張る牽引療法も行っていました。
脚を曲げるリハビリ
牽引療法を1週間行うと、脚はまったく動かなくなりました。
そこで、脚(膝)に輪っかをはめて、滑車を使って引っ張ることで、無理やり脚を曲げるリハビリが行われました。
このリハビリは、痛くて非常に辛いものでした。
膝がまがるようになるのに、私の場合1か月かかりました。
中期リハビリ(手術後1か月から4か月 退院まで)
退院までは、病院の理学療法室で毎日リハビリを行っていました。
関節可動域訓練
ベッド上安静が解除された後、病院のリハビリ室で理学療法士の助けを借りて股関節の可動域を広げる運動が行われました。
荷重をかける訓練
体重計で荷重(10kg、30kgなど)を確認しながら、徐々に荷重を増やし、レントゲンやMRIで骨の癒合状態や再発を確認していました。
後期リハビリ(退院後から5か月)
退院後は、2日に一度、通院してリハビリを行っていました。
歩行訓練
松葉杖を使った歩行訓練が主でした。
まずは平らな場所での歩行訓練から始め、徐々に距離と時間を延ばしていきました。
その後、階段の上り下りの訓練を行い、日常生活に必要な動作を復帰させました。
日常生活動作訓練(ADL訓練)
椅子からの立ち上がりや、片足立ち、不安定な場所でのバランス訓練を行い、転倒リスクを減らす訓練をしました。
入院から復職までの期間
入院したのは1984年11月19日、手術日は1984年12月6日、退院は1985年4月29日で、自宅療養5か月を経て、産業医のOKをももらって、会社(東京)への復職は、1985年10月1日になりました。
入院6か月、自宅療養5か月、まるまる1年の休職でした。
まとめ
30歳で発症した左大腿骨骨頭壊死に対し、「回転骨切り術」を受け、入院6か月、自宅療養5か月と、まるまる1年を費やしました。
長期療養は予想以上に大変で、復職への焦りも募る日々でした。
しかし、手術とリハビリを乗り越え、社会復帰を果たした矢先、3か月後に大腿骨骨頭壊死が右足にも再発。
次の記事では、この右足の再発について詳しくお伝えする予定です。
この記事の体験が、同じ病に向き合う方々にとって少しでも支えとなれば幸いです