人生が一変する人工関節置換術、痛みから解放され、再び自分の足で歩ける日を夢見て手術に挑んだはずが、手術後まさかの深部感染になってしまいました。
結局、感染の治療のために2度の洗浄手術が必要となり、2回目の洗浄手術では過酷な、足の内側から徹底的に洗浄する『循環洗浄』を行いました。
先が見えにくい深部感染に苦しみながらも、なんとか感染を落ちつかせて、退院することができました。
この記事では、深部感染の発症から治療までの経緯を振り返り、深部感染や治療について詳しく書いています。
これから人工関節置換手術を予定している方や、深部感染ついて知りたい方は、ぜひ読んでいただきたい体験記です。
深部感染とは
深部感染は、手術後の傷口の奥深くで発生する感染症で、特に注意が必要な状態です。
筋肉や筋膜などの深部組織に細菌が侵入し、炎症を引き起こします。
症状には手術部位の痛み、腫れ、熱感、発熱、膿の排出などがあります。
診断には血液検査や患部の観察が用いられ、治療には抗生物質の投与や再手術が必要で、特に循環洗浄や人工関節の交換が行われることがあります。
深部感染の起こる確率
初回の人工関節置換術での 深部感染の発生率は0.2~2.9%と低いですが、糖尿病や肥満、免疫力の低下といった要因でリスクが高まることが知られています。
私の深部感染発症と治療の経緯
手術直後は順調でしたが、退院して1週間後(3/16)、血液検査で炎症反応(CRP)が異常に高い数値(21.2)を示しました。
この段階では発熱もありましたが、最初は蜂窩織炎と診断され、抗生物質の点滴治療を受けました。
しかし改善が見られず、最終的に深部感染と診断され、徹底洗浄(デブリードマン)と循環洗浄による治療が必要になりました。
蜂窩織炎と深部感染の見分け
蜂窩織炎(ほうかしきえん)は皮膚や皮下組織に細菌が感染し、腫れや発熱、赤みを伴う炎症を引き起こします。
深部感染も同様の症状を呈するため、初期段階では区別が難しかったのだと思います。
主治医が蜂窩織炎を疑ったのは、初期の症状が深部感染より浅い組織に起因すると考えられたためみたいです。
抗生物質の点滴治療
3/23より、入院して、蜂窩織炎や深部感染の治療薬になる「セフォメジン」の点滴を受け始めました。
しかし、点滴を初めて2週間後の4/5になっても病状の改善はなかったので、主治医は深部感染と判断して、4/8徹底洗浄(デブリードマン)を実施しました。
徹底洗浄(デブリードマン)とは
徹底洗浄(デブリードマン手術)は、壊死組織や感染組織を除去し、創傷を清浄化して治癒を促進するための重要な治療法になります。
メスや電気メスを用いて感染部位を徹底的に洗浄・摘除し、細菌感染を除去します。
私の場合は、徹底洗浄のほかに、抗生物質を脚の内部に埋め込んで、細菌を除去する方法もとられました。
しかし、炎症反応を示すCRPの値は、0.1まで下がったのですが、手術跡からの浸出液があ止まらなかったので、感染は治まっていないと判断され、持続的に洗浄液を感染部位に循環させる「循環洗浄」が必要になりました。
循環洗浄
5/6から5/15にかけて循環洗浄を行いました。
これは、感染部位に洗浄液を持続的に循環させる方法で、膿や細菌を効果的に除去します。
洗浄液は専用の装置で循環され、手術後に一定期間継続します。
この治療により、感染の拡大を防ぎ、回復を促進することが目的になります。
循環洗浄の手順
- 洗浄液の注入:洗浄液を感染部位に注入するためのチューブを設置します。
- 持続的な循環:洗浄液が注入される一方で、別のチューブを通じて使用済みの液を排出します。この過程は専用の装置で24時間体制で行われます。
- 液の回収と測定:排出された洗浄液は容器に集められ、看護師が定期的に量を測定し、排出量や液の状態を確認します。
- 感染管理:洗浄液の性状や排出量を観察しながら、必要に応じて洗浄液の種類や量を調整します。
この方法により、感染部位を綺麗に保ち、細菌の増殖を防ぎ、感染の治癒をしていきます。
循環洗浄の経験の感想
主治医は、循環洗浄の期間は、当初は2~3日程度と言われていましたが、私の場合は10日間続き、ベッドで身動きが取れない日々が続きました。
この治療は肉体的にも精神的にも大きな負担となり、今でもあの辛さを忘れることはできません。
深部感染の原因と教訓
私の深部感染の主な原因として、免疫疾患で長年服用していた免疫抑制剤による免疫力低下と、手術の複雑さによる時間の長さが関係しているかもと言われました。
感染リスクが低いからと軽視せず、手術後から退院までの間も感染リスクをしっかり理解して、脚の状態をチェックする重要性を痛感しました。
循環洗浄後の経過
3/23に入院して、6/10に退院ですから、約2か月半の間、感染と戦っていたことになります。
循環洗浄後から、退院までの経緯は以下になります。
6/5に出血、浸出液が止まった時は、看護師さんといっしょに手をたたいて喜びました。
- 5/15:チューブを外す(循環洗浄終了)
- 5/22:手術痕の抜糸
- 5/23:サイボックス終了。血液検査のヘモグロビン値(基準:13.7~16.8)が5.6まで下がり、極度の貧血状態と言われる。これ以上、サイボックスは使えないという判断で、抗生物質はサイボックスからダラシンに変更。
- 6/6:傷口とチューブを外した2か所からの出血および浸出液が止まり、炎症反応も値も下がっていたので、感染が落ち着いたと判断され、6/10に退院。
まとめ
深部感染は人工関節置換術後の稀な合併症ですが、患者の長期的な生活に大きな影響を与える重大な問題です。
感染は手術後1週間で判明し、2度の洗浄手術と10日間にわたる循環洗浄による治療を経て、2か月半の入院にて回復しました。
循環洗浄は感染組織を徹底的に除去し、再発を防ぐ重要な処置ですが、患者にとって身体的・精神的負担が非常に大きい治療法です。
感染率は低いものの、感染が発生すると人工関節の安定性や機能を損ない、再手術が必要になる場合があります。
手術前の説明では感染リスクが軽視されがちですが、私の記事でお話した経験は患者がリスクを正しく理解し、適切な準備をするうえで役立つ話だと思っています。